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    研究会の主旨

       ガラス転移は21世紀に残された物性物理学の最後のフロンティアと言われるほど魅力的なテーマである。それは、有限温度で液体の緩和時間が発散する(ように見える)という極めて異常な現象であると同時に、その状態に至るには無限大時間が必要というある種ロマンチックな困難さを伴うからであろう。近年、この緩和時間の問題に挑戦するいくつかの新しい方法も試みられている。実験的には蒸着法で低エンタルピー・高密度の安定ガラスを作成する方法、理論的にはランダムピニングで実効的なガラス転移温度を引き上げる方法などがこれにあたる。高温あるいは低圧からガラス転移に向かう際の顕著な変化の一つは静的・動的不均一性の成長であるが、この起源を解明するための種々の構造解析、誘電緩和測定、計算機シミュレーションなども盛んに行われている。また、蛋白質の動的転移、粉体のジャミング転移、スピングラス転移、電荷ガラス転移などの関連した現象も活発に研究されている。物質寄りに見れば、液体―液体転移などの観点で水は依然として興味深い対象であるし、イオン液体など新しいガラス形成物質も見つかっている。ガラス自身の物性としても、従来のボゾンピークなどの低エネルギー励起の問題に加え、エイジングや結晶化の問題も再注目されている。さらには材料科学や食品科学などの応用分野においても、ガラス転移の概念は重要である。
       以上の様な状況において、ガラス転移に関わる実験、理論、計算機シミュレーションの研究者、さらには、蛋白質、粉体、固体物理などの周辺分野の研究者が一同に会し、現状を確認し合うとともに、将来の研究の方向について議論することは非常に有意義である。物性研では、2000年頃から3〜4年に一度、国内最大のガラス関係の研究集会として、短期研究会を開催してきた。今回、3年ぶりに行う本研究会では、これまでの参加者以外にも、新しい世代、新しい分野の研究者を加え、より包括的かつ将来に向けた議論を展開したい。


    研究会の概要

    日時:2018年5月10日(木) 10:00 〜 5月12日(土) 16:20(3日間)

    場所:東京大学物性研究所 本館6階大講義室(〒277-8581 千葉県柏市柏の葉5-1-5,04-7136-3599)

    主催:東京大学物性研究所

    定員:120名

    使用言語 : 日本語または英語(外国人の発表も歓迎します)

    参加費:無料(懇親会費別)

    懇親会:5月11日 18:30〜20:30
                 会費4,000円 (学生2,000円)

    世話人:山室 修(東大物性研)、田中 肇(東大生産研)、金谷 利治(KEK, J-PARC)、宮崎 州正(名大院理)、早川 尚男
    (京大基研)、深尾 浩次(立命大理工)、野嵜 龍介(北大院理)、巾崎 潤子(東工大物質理工)、新屋敷 直木(東海大理)

    連絡先:山室修(yamamuro@issp.u-tokyo.ac.jp, 04-7136-3494)

    事務連絡先:本田裕子(y-honda@issp.u-tokyo.ac.jp, 04-7136-3374)

    登録システム管理者:楡井真実(m_nirei@issp.u-tokyo.ac.jp, 04-7136-3424)


    参加申込

    口頭発表は4月16日まで、ポスター発表は4月23日までに講演要旨とともに受付ページからお申込下さい。最終的な口頭とポスターの割り振りは、世話人グループで決定させて頂きます。旅費・宿舎の締切は4月16日、アブストラクトの締切は4月23日です。旅費や宿舎は限りがありますので、ご希望の方はできるだけ早めにお申し込み頂くようお願いします。


    口頭発表申込および旅費・宿舎申請は締め切りました。多数のお申込みありがとうございました。(4/19更新)

    ポスター発表申込は締め切りました。(4/24更新)
    Post-deadline poster(アブストラクト無し)を5/8まで受け付けます。
    参加登録ページ からお申込下さい。

    当日参加も受け付けますが、できるだけ5/8までに事前参加登録をお願いします。(5/2更新)


    発表形式

    口頭発表(4/27更新)
    ★ 発表時間は25分です。必ず質問時間を5分間以上残すようにして下さい。
    ★ 外国人の参加者もいらっしゃいますので、できれば発表スライドは英語で作成してください。無理のない範囲で結構です。
    ★ 広い分野からの参加者がいらっしゃいますので、必ず分かり易いイントロを入れて下さい。
    ★ 発表にはご自分のパソコンをお使い下さい。

    ポスター発表(4/27更新)
    ★ ポスターボードのサイズは縦164cm、横113cmです。
    ★ できればポスターは英語で作成してください。無理のない範囲で結構です。
    ★ 奇数番号はポスター1(5/10)、偶数番号はポスター2(5/11)です。
       少なくともその時間帯はポスターの前で説明をお願いします。
    ★ 全てのポスターは初日(5/10)の午後のセッションが始まるまでに掲示して下さい。
      (2日目にいらっしゃる方は、可能な限り早めに貼って下さい。)
    ★ 全てのポスターはできるだけ研究会の全期間を通じて掲示しておいて下さい。
    ★ 画鋲はこちらで用意します。


    プログラム

    5月10日(木)

    10:00-10:15副所長挨拶(吉信 淳)・趣旨説明(山室 修)
     

    セッション1:ガラス・過冷却液体1座長 深尾 浩次

    10:15-10:40山室 修(東大物性研)単純分子のガラスおよび過冷却液体の構造
    10:40-11:05辰巳 創一(京工繊大)蒸着ガラスの低温異常性に見る蒸着ガラスの不均一性
    11:05-11:30猿山 靖夫(京工繊大) 温度変化に対するα過程緩和時間の遅れの現象論的考察
    11:30-11:55野嵜 龍介(北大院理)糖・糖アルコールガラスにおける副緩和過程の振舞い
    11:55-12:20齋藤 真器名(京大複合原科研)Johari-Goldstein β 緩和の微視的な観測とそのフラジリティ指数との関係性
     

    12:20-13:30昼休み(世話人会)
     

    セッション2:ガラス・過冷却液体2座長 宮崎 州正

    13:30-13:55田中 肇(東大生研)過冷却液体における方位秩序形成と遅いダイナミクス
    13:55-14:20小田垣 孝(科学教育総研)温度変調応答について
    14:20-14:45吉野 元(阪大サイバー)並進と回転自由度ガラス転移の平均場理論
    14:45-15:10古川 亮(東大生研)fragile-strongガラス形成液体間のレオロジーに見られる質的な違いについて
    15:10-15:35高田 章(旭硝子)ガラスの非平衡状態を記述する分配関数の理論モデルに関する研究
     

    15:35-17:35コーヒーブレイク&ポスター発表1
     

    セッション3:粉体・ジャミング・レオロジー1 座長 吉野 元

    17:35-18:00早川 尚男(京大基研) 濃厚サスペンションのレオロジーの理論
    18:00-18:25大槻 道夫(阪大基礎工)周期剪断を受けた粉体におけるShear Jamming
    18:25-18:50川崎 猛史(名大理)ジャミング転移点近傍における粒子軌道の可逆性に関する非平衡相転移
     

    5月11日(金)

    セッション4:粉体・ジャミング・レオロジー2座長 早川 尚男

    8:45-9:10池田 昌司(東大総合文化)ジャミング転移における粘性発散と緩和時間の増大の対応関係
    9:10-9:35桂木 洋光(名大環境)粉体層からの棒引き抜き抵抗とシアー・ジャミング
    9:35-10:00瀬戸 亮平(京大院工)コロイド分散系のマイクロストラクチャーと非ニュートン流動特性
    10:00-10:25栗田 玲(首都大東京)泡沫ダイナミクスの液体分率依存性
     

    10:25-10:40コーヒーブレイク
     

    セッション5:水・ネットワークガラス座長 鈴木 芳治

    10:40-11:05金 鋼(阪大基礎工)過冷却水において水素結合はどのように切断するのか?: 自由エネルギー曲面の鞍点を通過しない遷移経路の検出
    11:05-11:30村上 洋(量子科学機構)ナノ拘束水の室温ガラス状態
    11:30-11:55小野寺 陽平(京大複合原科研) ガラス・液体・アモルファス物質の回折パターンの系統的な理解
    11:55-12:20小原 真司(物材機構)高温・高圧下から合成された永久高密度シリカガラスの構造とダイナミクス
     

    12:20-13:20昼休み
     

    セッション6:ガラス・過冷却液体3 座長 田中 肇

    13:20-13:45古府 麻衣子(J-PARC)ガラス形成液体における自己拡散過程の空間スケール依存性
    13:45-14:10岩下 拓哉(大分大理工)実空間で視る液体の原子レベルダイナミクス
    14:10-14:35尾澤 岬(モンペリエ大)Swap Monte Carlo法によるガラス転移の次世代シミュレーション研究
    14:35-15:00西川 宜彦(東大総合文化)格子気体模型のガラス転移と動的性質
     

    15:00-17:00コーヒーブレイク&ポスター発表2
     

    セッション7:生体系物質・電子系ガラス座長 新屋敷 直木

    17:00-17:25水野 大介(九大院理) アクティブガラスとしての細胞、および、細胞質の力学的性質
    17:25-17:50平田 文男(豊田理研)タンパク質の平均自乗変位の温度依存性に関する統計力学理論
    17:50-18:15鹿野田 一司(東大院工)電子系ガラスに見る量子性
     
     

    18:30-20:30懇親会
     
     

    5月12日(土)

    セッション8:高分子・ソフトマター座長 野嵜 龍介

    8:45-9:10新屋敷 直木(東海大理)高分子溶液中の水とアルコールの誘電緩和とガラス転移
    9:10-9:35高野 敦志(名大院工)一連のポリ(4-n-アルキルスチレン)類のガラス転移温度の分子構造依存性
    9:35-10:00浦川 理(阪大院理) 高分子ダイナミクスの階層性とガラス転移
    10:00-10:25岩宮 陽子(超越化研)超越ガラス技術とその応用(超越グラスコート)
     

    10:25-10:40コーヒーブレイク
     

    セッション9:液―液転移・ポリアモルフィズム座長 巾崎 潤子

    10:40-11:05鈴木 芳治(物材機構)実験によるポリオール水溶液の液−液臨界点の位置の予測
    11:05-11:30渕崎 員弘(愛媛大理工)ヨウ化錫の水型ポリアモルフィズム
    11:30-11:55水口 朋子(京工繊大)拘束系のシクロヘキサンの液液転移
    11:55-12:20梶原 行夫(広大総合)ガラス転移の起源を液体−液体相転移に求める
     

    12:20-13:20昼休み
     

    セッション10:イオン伝導体・イオン液体座長 金谷 利治

    13:20-13:45河村 純一(東北大多元研)ガラス・過冷却液体のイオン伝導度と拡散係数
    13:45-14:10巾崎 潤子(東工大物質)分子動力学による多孔質系のイオンダイナミクスの動的不均一性の研究
    14:10-14:35芝 隼人(東北大金研) イオン液体におけるメソ液晶構造形成と動力学の分子シミュレーション
     

    セッション11:ガラス・過冷却液体4 座長 山室 修

    14:35-15:00小島 誠治(筑波大物質工)生体凍結保護物質グリセロールの常温高圧と常圧低温におけるガラス状態の研究
    15:00-15:25森 龍也(筑波大物質工)テラヘルツ時間領域分光によるフラクトン励起の検出
    15:25-15:50水野 英如(東大総合文化)ガラスにおける固有振動状態とフォノン振動
    15:50-16:15白井 光雲(阪大産研)ガラス物質の残留エントロピーと熱力学第三法則
     

    16:15-16:20クロージング
     
     

    ポスターセッション (2018年5月8日現在)

    奇数番号はポスター1(5/10 15:35〜)、偶数番号はポスター2(5/11 15:00〜)です。
    P1.寺島 幸生(鳴門教大)水素結合性液体のガラス転移過程における活性化エネルギーの変化とフラジリティ
    P2.島田 真成(東大総合文化)アモルファス固体における低周波局在振動の空間構造
    P3.中村 統太(芝浦工大工)スピングラスの正しいシミュレーション法
    P4.高江 恭平(東大生研) 立体斥力と双極子相互作用の競合による強誘電−反強誘電相転移
    P5.Nandi Manoj Kumar(名大理)Role of the Pair Correlation Function in the Dynamical Transition Predicted by Mode Coupling Theory
    P6.簑口 友紀(東大総合文化)ヘリウム物理吸着薄膜のガラス様応答と超流動アニーリング
    P7.松尾 隆祐(阪大院理)応力・長さ・温度変化の同時測定によるエラストマー変形の熱力学的記述
    P8.蒲沢 和也(CROSS)フラストレート磁性体の(古典)スピン液体状態の振る舞いについて
    P9.石野 誠一郎(東大生研)非相加系のガラス転移と結晶化
    P10.菊本 元気(京工繊大)高分子とそのダイマー混合系のガラス転移
    P11.阿部 洋(防衛大)イオン液体のガラスのアニオンサイズ効果
    P12.萱野 智洋(京工繊大)粉末X線回折を用いた蒸着フェノールフタレインガラスの構造の温度変化の検証
    P13.田村 建斗(京工繊大)様々な物質を用いた真空物理蒸着によるガラス形成の試み
    P14.光元 亨汰(阪大サイバー)ランダム充填パッチコロイド系の回転自由度のダイナミクス
    P15.柴崎 裕樹(物材機構)高圧熱処理による金属ガラスの構造・特性変化
    P16.小林 美加(東大生研)ガラスの熱応力破壊現象
    P17.大平 遼(京工繊大)超高感度DSCを用いたアニーリング効果の検証
    P18.山口 毅(名大院工)低分子液体のCox-Merz則:分子形状の影響
    P19.岩下 靖孝(九大)パッチ粒子によるコロイダルガラス
    P20.煖エ 東之(茨城大院理工) プロトン伝導から見た水素結合系のガラス転移現象
    P21.森 勇介(阪大基礎工)ジペプチドの構造変化における反応経路と反応座標
    P22.菊辻 卓真(阪大基礎工)過冷却水中における水素結合が形成するネットワーク構造と破断プロセスの関係
    P23.友重 直也(阪大基礎工)高分子融体のガラス化過程:構造とダイナミクス
    P24.山口 優太(東大地震研)一定圧力条件下における引力を持つ粉体のレオロジー
    P25.中村 壮伸(産総研) 共変性原理に基づく自由エネルギー地形の構築と状態遷移の記述
    P26.川合 將義(KEK)超越グラスコート技術でこどもたちを守りたい
    P27.葉 韋廷(名大理)Reproducing Reversible-Irreversible Transition of Dilute Sheared Suspension from a Deterministic Set of Equations− Effect of Hydrodynamic and Non-Hydrodynamic Interaction
    P28.Gubarevich Anna(東工大)Charge correlations in the water-in-salt systems studied by molecular dynamics simulation
    P29.藤井 慎季(東海大)Poly(vinyl pyrrolidone)アルコール溶液と水溶液における溶質と溶媒の誘電緩和とガラス転移
    P30.嶋屋 拓朗(東工大理)高密度バクテリア集団における動的不均一性の解析とその展望
    P31.西山 枝里(千葉工大)アモルファス高分子における熱力学的フラジリティーと協同的再配向領域
    P32.藤村 順(千葉工大)種々の測定で観測したアモルファススチレンオリゴマーの緩和現象
    P33.横田 麻莉佳(千葉工大)アモルファス高分子熱容量の分子振動解析
    P34.村中 正(愛知工大)ガラスと過冷却液体における「流れ」
    P35.山田 類(東北大学際研)回復熱処理手法を通じた金属ガラスの構造若返りと結晶化
    P36.高塚 将伸(東海大)広帯域誘電分光法によるPoly (ethylene imine)水溶液の液体からガラス状態における高分子と水の分子ダイナミクス
    P37.佐々木 海渡(東海大)ポリビニルメチルエーテルのエンタルピー緩和と誘電緩和
    P38.秋葉 宙(東大物性研)水素吸蔵・放出処理によるPdPt合金ナノ粒子の固溶化過程
    P39.水野 勇希(東大物性研)X線と中性子で観たCS2ガラスおよび液体の分子配向相関
    P40.名越 篤史(国士館大)メソポーラスシリカ細孔内の有機溶媒の熱容量挙動
    P41.楡井 真実(東大物性研)超高エントロピー液体・アルキル化テトラフェニルポルフィリンのガラス転移と分子運動
    P42.川上 直也(東大新領域)原子間力顕微鏡による氷表面の原子分解能観察
    P43.浅野 優太(東大物性研)分子動力学法による複雑流体中のカルマン渦の解析
    P44.樋口 祐次(東大物性研)粗視化分子動力学法による結晶性高分子のガラス転移
    P45.伊藤 功(東大物性研)高精度レーザーによる低熱膨張材料(ガラス、セラミックス)の経年変化測定
     
     




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