実験装置紹介


(1) 高分解能パルス冷中性子分光器 AGNES
   (Angle Focusing Cold Neutron Spectrometer)

 AGNESは飛行時間型の非弾性散乱分光器であり,エネルギー遷移と運動量遷移をパラメータとして動的構造因子S (Q ,E )を測定することができます。この量から,フォノンの分散関係や状態密度,さらには原子の拡散速度などが得られます。現在は原子炉(JRR-3)が停止しているため使えませんが、早ければ2015年度から再開する予定です。

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AGNES
・AGNES 原理図
・AGNES 性能表
取り出し角 78° 110°
中性子波長 4.22Å 5.50Å
ΔE 領域 -4〜20 meV -2〜6 meV
ΔE 分解能 120 μeV 49 μeV
Q 領域 0.2-2.7 Å-1 0.15-2.1 Å-1
ビームサイズ 2(横)×4(縦) cm2 (共通)
温度範囲 0.7〜480 K (共通)

(2) 高圧下断熱型カロリメーター

 高圧下で物質の熱容量を超高精度で測定することができます。He気体を圧媒体に用いるため,高圧・低温での測定が可能です。熱容量からエントロピーや振動状態密度の絶対値が得られます。長時間(1ヶ月オーダー)のエンタルピー緩和測定もできます。

温度範囲         5〜380 K
圧力範囲         0〜250 MPa
測定精度(ΔCp /Cp )   0.0005
試料量           1〜5 g
高圧下断熱型カロリメーター

(3) トップローディング式断熱型カロリメーター

 試料を簡便にセットできるだけでなく,液体窒素温度で試料をセットすることができます。温度を上げると分解や融解をしてしまう試料の熱容量を測るのに最適です。低温でのセッティングでは,上部にグローブボックスを設置します。

温度範囲         10 〜 380 K
測定精度(ΔCp /Cp )   0.001
試料量           1〜5 g
トップローディング式断熱型カロリメーター

(4) 蒸着試料用断熱型カロリメーター

 4Kで気体分子を試料容器に蒸着し,得られたガラス試料の熱量を2Kから測定することができます。長時間の蒸着を可能にするため,冷凍機を内蔵しています。きわめて単純な分子のガラスを作成することを目指しています。

温度範囲         2 〜 100 K
測定精度(ΔCp /Cp )   0.005
試料量           0.1〜1 g
蒸着試料用断熱型カロリメーター

(5) X線回折装置(Rigaku Ultima III)

多目的,高効率の粉末X線回折装置です。液体や粉末結晶試料の静的構造を 広い温度範囲で調べることができます。二次元高速検出器を備えており,普通 の結晶試料なら数分で測定できます。オプションで小角散乱測定も可能です。低温蒸着システムも使用可能です。

温度範囲         3〜370 K
Q範囲           0.01〜17 Å-1 (Cu及びMo管球を使用)
試料量          10〜100 mg
X線装置

(6) 誘電率測定装置

  複素誘電率を広い温度範囲で測定し,分子の緩和挙動を調べることができます。中性子準弾性散乱よりずっと遅いタイムスケールの測定です。 数種類の試料容器を備えており,単結晶,粉末,液体など様々な状態の試料が測定できます。

温度範囲          2〜330 K
周波数範囲         10 μHz 〜 10 MHz
試料量           約0.1 g
誘電率測定装置

(7) 回転型レオメーター (Bohlin Gemini II)

複素粘性率を広い温度範囲で測定し液体の緩和挙動を調べることができます。 粘性率はガラス転移に最も直接関係する物理量です。

温度範囲          -150 〜550℃
周波数範囲        1μHz 〜150Hz
トルク範囲         0.05μNm 〜200mNm
トルク分解能        <1nNm
試料量           約0.5cc (25mmプレートの場合)
回転型レオメーター

(8) 示差走査熱量計 (Perkin Elmer Diamond DSC)

相転移やガラス転移等の熱的性質を少量の試料で簡便に測定することが出来ます。熱補償型であるため,発熱・吸熱の時間変化の測定も可能です。

温度範囲          90〜1000 K
試料量           1〜10 mg
示差走査熱量計

(9) 差動型示差熱天秤 (Rigaku TG-DTA)

 物質の温度を変化させながら熱の出入りと重量の変化を同時に測定します。物質の熱分解や脱・吸着過程などにおける重量変化を定量的に調べることができます。

温度範囲        RT 〜1100℃
試料量         最大1 g
TGレンジ        ±0.1〜±250 mg
TG分解能         0.1μg
差動型示差熱天秤

(10) 蒸着試料用中性子散乱クライオスタット

 低温で試料気体をゆっくりと蒸着してガラス状態を作り,in situの中性子散乱実験ができます。回折装置から非弾性散乱装置まで,ほとんど全ての中性子分光器に設置可能です。

蒸着最低温度       7 K
測定温度範囲       7〜300 K
蒸着試料用中性子散乱クライオスタット

(11) 気体高圧発生装置

 気体高圧下で様々な物性測定を行うための圧力発生装置です。大容量のバッファータンクを有しているため試料容器の温度変化などによる圧力変化が小さく,さらに背圧弁により設定値以上には圧力が上がらないように工夫されています。比較的軽量でコンパクトであるためどこにでも移動できます。

圧力範囲       200MPaまで
対象気体       ステンレス鋼を腐食しない任意の気体
気体高圧装置

(12) 液体高圧発生装置

 液体高圧下で様々な物性測定を行うための圧力発生装置です。上記の気体高圧装置より容易に高い圧力まで加圧できます。

圧力範囲       500MPaまで
圧力媒体       ステンレス鋼を腐食しない任意の液体
液体高圧発生装置

 以上の装置以外にも,偏光顕微鏡(高温ステージ付)や試料ハンドリングのための設備(ドラフト,グローブボックス,真空ライン,電気炉,真空蒸着装置,振動ミルなど)が整備されています。また,AGNES以外にも物性研のiNSE,HER, 東北大金研のHERMES(在JRR-3),J-PARCのAMATERAS, TAIKAN, DNA, NOVA, ISIS(英国)のHRPD, MARI,IRIS,NIST(米国)のHFBS, DCS, NSE, FRM-II (ドイツ)のTOFTOFなどの中性子分光器を使用しています。

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